目次
毛呂さんとSaaS企業で働くお二方の3人で、事前に用意した7つの質問を元にSaaS業界を深掘りするという企画です。SaaS企業で働かれている登壇者の方でも意見が割れたりと、興味深い内容となっているので、是非ご参照下さい。
Kと申します。私は新卒で大学院を出た後に大手の自動車系のシステム開発に携わり、1年でやめてパチスロ生活を3年していました。その後エンジニアに戻りメーカーで1年社内SEとして働き、SaaS企業で2年インフラメインで働いて、今スタートアップSREエンジニアとして働き始めて2ヶ月です。本日はよろしくお願いします。
私は機械工学出身だったので、新卒でプラントエンジニアを3年やりました。その後、そこからITに職種を変えた後の1社目が宅配系のSaaS企業で色々ありまして半年でやめました。そこからはAWSが好きだったのでAWS専業のCIer転職して大体2年半働き、現在はeコマース系のSaaS企業で1年3ヶ月働いてます。本日はよろしくお願いします。
毛呂:簡単に言うと毎月定期的にお金を払ってサブスクリプションで使う、例えばNetflixのようなものをイメージしていただけると分かりやすいです。
毛呂:儲かっている/いないがはっきり分かれているのが私の感覚ですね。儲かっていないからダメではなく、意図的に赤字を出している企業だと大丈夫かと。広告費をかけて計算して赤字であれば良いのですが、利益が出るべき時期にまだ赤字だとまずいです。
Kさん:儲かっていない印象が強いです。私が現職に入社した時にSaaSとは何かやARR、MRRを学びました。その説明の例で用いられる海外のSaaS企業はうまくいっている。日本のSaaS企業は例で取り上げられないので、うまくいっていないイメージがあります。ただ、成長している企業もあり、今は資金を開発に割いて赤字だが成長の見込みはある。そんな印象ですね。
Fさん:まさにうちの会社も、コロナ渦にユーザーが増えて一時期はすごい儲かっていました。そのフェーズでテレビCMにタレントを起用して一気に知名度を広げたので赤字ではありました。でもユーザー数は増えたので、これから黒字にしていくところですね。毛呂さんの話にもありましたが、意図的に広告費を使って赤字にしているのであれば良いですが、それが計算外に赤字になっているとまずいですね。
Kさん:僕は、今の自分の立場的には高いという感覚ですね。
Fさん:日本のSaaS企業は年収が低いと思っています。国内の話で言うと利益が出ている会社はかなり年収が上がりやすいというのが、個人的な印象です。
毛呂:アメリカだと0→1のフェーズで100億円集まります。解雇しやすいのも相まってか、年収1500〜2000万円で雇用はあります。日本は0→1フェーズだと資金調達がしにくく、簡単に解雇できないので、提示年収が保守的になりやすいです。
ただ、Kさんの会社は1→10のフェーズ、10→100のフェーズになると、何十億も調達して年収レンジが高くなるイメージがあります。実際はどうでしょう?
Kさん:自分が提示頂いた額は高いと思っていたんですよね。それが会社の平均年収を見ると自分よりも高かったので、それを見てこの会社はうまくいっていると実感できました。
毛呂:年収に関して、会社が儲かりそうかは大事です。大企業向けのサービスを展開しているSaaS企業はお金がある会社が多いです。そういったところだと年収レンジも高いです。
司会:SaaS企業では社員数が多い方が年収が高いと思っていましたが、毛呂さんはいかがでしょうか?
毛呂:全然そんなことないです。社員数が30名〜100名ほどでも100億円を調達してる会社はあります。そのため、少人数だけど1人の平均年収は1000万円を超えます。社員数が多くて上場している場合は給与制度を固めないといけません。スタートアップだと人事制度も好きにできるので、社員数が少なくてニッチ市場の高収益なSaaS企業は、年収レンジがすごく高いケースがあります。
Fさんの会社は上場している有名なSaaS企業ですが、年収レンジを話せる範囲で教えて頂けませんか?
Fさん:正直、うちの会社はそこまで高くないという印象です。他の会社のエンジニアでメンバークラスの年収を聞く機会がありましたが、その方の年収とうちの会社のシニアエンジニアテックリード級の年収が大体同じでした。会社の大小は関係ない印象があります。
毛呂:SaaSにおける年収は、会社を選ぶだけで200万円違うことはありえます。
面接で提示された年収で「僕は市場価値が低い。」と考える必要はなく、受けている企業のフェーズで金額が変わります。そこは皆さん覚えておいて頂けると。
ちなみにKさんの会社はできる人だけ高年収で取ります。なのでビジネスサイドの人も含めて年収高めですよね?
Kさん:そうですね。かなり高いと思います。エンジニアだとリーダーの場合は他企業のテックリード程度の給与があり、ビジネスサイドの人は自分たちの1.5倍〜2倍なので。
毛呂:そうですよね。だから組織やサービスのフェーズによって違いがありますが、例外もあるのはSaaSの面白いところです。
毛呂:Fさんの会社でメインで使っている言語はPHPですが、Laravel以外のフレームワークなんですね。私もLaravel以外と伺った時に意外だと思いました。Fさんも入社を決める際に悩んだところですよね?
Fさん:はい、すごく悩みました。まさにLaravelだったらと思っていましたが、昔からのフレームワークだったので。
毛呂:面白いのが、Fさんが「入社してみたら大して重要な問題ではなかった。」とおっしゃっていたところです。入ってみて心境の変化ってありました?
Fさん:クリーンアーキテクチャを使っていて、フレームワークに依存しないソフトウェアの作りをしているので、入社後は言語へのこだわりはなくなりましたね。
毛呂:一方でKさんの会社では技術スタックってどうでしたか?
Kさん:フロントエンドはNext.js、サーバーサイドはExpressでGCPのサーバレス構成ですね。ほとんどサーバレスでやっています。
毛呂:フロントエンドとバックエンドどちらもTypeScriptでしたか?
Kさん:そうですね。
毛呂:会社によって技術の方針が違うので非常に面白いですね。
毛呂:これは会社によって全然違います。0→1フェーズのスタートアップだと、月30〜40時間残業もあるかなと。初期フェーズで資金の目処が立っていないと忙しくなる場合がある。ただ、上場していると忙しく働くことは無いのではないかなと。
Kさんの会社も1→10、10→100のフェーズですが資金に余裕がある会社なのでハードワークする人は多くないと思っています。実際のところFさんはどうですか?
Fさん:ハードではないです。開発の進捗が良くなければリリース日を遅らせるように融通が効くのもあります。また、スクラム開発なので、残業すると見積もり精度がずれてしまい、1日8時間でどれだけ開発できるかを正確に計測するため、残業は推奨されていないです。ただ一言付け加えるとSlackを休みの日も見ている人はすごく多いです。
毛呂:要は仕事が趣味というか好きな人が多いってことですよね?
Fさん:そうですね。
毛呂:Fさんは前職がCIer、クライアントワークの会社でしたので、PMがだいぶ働いている印象があります。現職と比べて働き方の違いはありますか?
Fさん:全然違いますね。前職のPMは残業時間を計算していなく、多分サービス残業をしていました。締め切りがあるので無理せざるを得ない時がありました。当時の残業時間は月40時間でした。現職は月4時間ですね。
毛呂:CIerの管理職だと、もっと働いてる人もいますよね?
Fさん:もう2倍以上やってる人もいると思います。
毛呂:CIerはPMが大変という話は私も知人から聞くので、参考までにそういう会社もあると頭の片隅に入れて頂けると。Kさんは現職と前職とそれぞれ働き方はどうでした?
Kさん:前職のHRテックの時は毎日出社していましたが、残業は月10時間でした。今はほぼフルリモートで月1回出社ですが、逆に時間は増えちゃいましたね。家にいると朝起きてパソコンを開いてから寝るまでずっと触ってて、気づいたら12〜13時間経ってます。残業っぽくやっているので月20〜30時間は好きでやっていますね。
毛呂:フルリモートの会社だと働きすぎてしまうのはあるあるかなと。気をつけて頂きたいのは仕事が好きな方だと勝手に働いてしまうケースがあったり、働きすぎてメンタルをやられてしまう方がいることです。
毛呂:SaaS企業は年齢層が多様化しています。40代も採用するし50代OKという会社も出てきています。地方在住で10年〜15年選手の高スキルの方が希望年収が高くない現象があり、それに気づいてる企業だと40代でも若い人とやれそうな人だったら採用します。場合によっては50代も検討します。という会社が増えてきています。
Fさんの会社だと、ボリュームゾーンや年齢が高い人の特徴はどうですか?
Fさん:ボリュームゾーンは20代後半から30代前半で、20代前半はあまりいません。40〜50代のシニアクラスやもっと上の方だと、基盤の構築やマネージャーであるなど一芸に秀でているものを持っている人が多い印象ですね。
毛呂:確かにDMM.com、LINE、Yahooのメガベンチャーでも40代のいろいろなシステムの裏事情も知り尽くしている方は、インフラの守り神をやっているケースを見るので、これはすごいあるあるだなと。
Kさんの会社だと若い方が多いイメージですけど開発組織だとどうですか?
Kさん:開発組織だけに絞ると20代後半、全社的に見ると31、32歳が平均年齢だったので比較的若いです。50代以上の方はあまりエンジニアとしてはいなく、ビジネス層の方にいるかもしれないです。
毛呂:会社のフェーズによって違う気がします。0→1フェーズのSaaS企業だと採用が大変なので40代〜50代手前の方に手伝ってもらっている場合もあります。
年齢が高くても見合った経験があれば会社に入れるチャンスが増えているので、ぜひ希望を持って頂けると。
毛呂:リモートワーク比率が高いです。Kさんの場合、前職は少なくとも週3出社で人によってはフル出社というHRテックの会社から、リモート主体のところに行かれましたが、採用方針とかエンジニアのレベル感を含めて語っていただけると。リモートの頻度が変わると採用できるエンジニア層や開発組織の雰囲気って違ったりしますか?
Kさん:全然違うかと。前職だとフル出社もしくは週3出社があり、取りたいけど取れない層がいました。今は海外のエンジニアの方が何名かいますが、フルリモートじゃないと採用できないですよね。働き方は採用に影響があると強く思います。
毛呂:そうですよね、Fさんの会社だと総じてレベルが高い人が多い印象です。自分のチームや全社的な出社頻度はどうですか?
Fさん:今の会社は、チームのマネージャーが決める形です。3月でチームが変わりましたが、前のチームは2週間に1回スクラムイベントをやる時は出社し、今のチームはフルリモートになりました。
毛呂:皆さんに覚えて頂きたいのが、有名なSaaS企業は採用基準が高くなるので、そこで内定が出る方はリモートワークへのこだわりが強い方が多いです。ですのでSaaS企業を探す際、週2〜3出社で探すなど、出社とリモートの頻度で企業のレベル感が変わります。
毛呂:SaaS業界はまだ伸び続けているので将来性はあります。ただ企業によって差がかなり出ています。大事なのはお客さんがどこなのか。大企業向けのSaaS会社は1回契約して頂くとお金があるので解約にならないため、お客さん次第でも将来性は違います。
あとSaaSって言ってるんですけど実態は受託開発に近いやり方をしているような、なんちゃってSaaS企業もあるので企業選びには気をつけた方がいいです。
Kさんは最近今の会社に転職されましたが、SaaS企業の将来性の見極め方、年収レンジが高い会社を見つけるためのアドバイスや思うことってありますか?
Kさん:会社の成長率とか、churn(解約率)とかですかね。あとは、その企業が資金調達をしている、いつしたか?とか。そういった情報は高給与となるか、将来性があるかの観点になるかと。
毛呂:ビジネス的に厳しいところを選んじゃうと年収が上がるわけがないので、ここは気をつけて頂きたいですね。FさんもSaaS企業を色々と見ていらっしゃったので、現職に入る時の転職活動時、SaaS企業の将来性をこういう観点で見ていたとかはありますか?
Fさん:正直、企業研究はあまりしていませんでした。一番大事にしていたのは自分が入社したSaaS企業がもし倒産しても、次の会社に行けるスキルを身につけられることでした。エンジニアとしての将来を大事にしていました。
毛呂:その中でPHPのLaravelではないところに入社されました。入社前にご相談を結構頂いたと思っていて、最終的な決め手や入ってみて改めて思うことはありますか?
Fさん:決め手は、入社前に同僚となる人と面談した時にやりがいを伺い、「カスタマー向けとビジネス向けのサービスの両方をやっているので、その両方の視点を持ちながらサービスを作れる。」という話をして頂きました。それを聞いてこの会社に入ろうと決めました。
毛呂:人事の方や社長と喋るのも大事ですけど、現場の方と喋るのも大事ってことですね。
Fさん:はい、めちゃくちゃ大事だと思います。
毛呂:今回、SaaS企業の内情を勤務者の方からお聞きすることができました。
7つのQ&Aによって、皆さんが抱いていた疑問や給与、業務内容などが徐々に明らかになってきたのではないでしょうか?次の記事では更に深堀った対談内容となるので是非ご覧になって下さい。
今の時点でご経験をされている言語や技術要素に関係なく、
①技術を通じてユーザーやお客様にとって使いやすいサービスの実現に興味があるエンジニアの方
②興味・関心がある技術について自ら学ぶ意欲をお持ちの方
上記に当てはまる方でしたら、素晴らしい企業とのマッチングをお手伝いできる可能性が高いです。
最近はお住まいの場所に限らず応募ができる企業や経験年数に関係なくフラットにご評価をして下さる企業も増えているため、ぜひ一度モロー宛てにご相談を頂けますと幸いです。