SES企業にお勤めのエンジニアの方の中には、SIerへの転職を考えている方もいるかと思います。SIerの方が、SES企業に比べて給与および待遇などがよく、要件定義や基本設計といった上流工程の仕事に携われるといったことが魅力であるためでしょう。
本記事では、SES企業からSIerに転職するためのプロセスや、転職をするにあたっての注意点を詳しく解説します。
SIerに転職するために役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
目次
システム開発における下流工程(プログラミング・テストなど)の仕事は、人間から生成AIに任せるような動きが出始めています。SES企業の業務範囲は、下流工程が中心であるため、今後仕事が少なくなってしまう懸念があります。
一方、要件定義・基本設計といった上流工程の仕事は、今後生成AIがさらに進歩しても、当面は人間が担当するフィールドといえるでしょう。理由としては、上流工程は顧客と直接折衝する仕事が多いためです。
そのため、上流工程を主に業務範囲とするSIerは、今後も仕事が減ることはなく、将来性も高いといえます。
給与やボーナスなどの収入および福利厚生制度は、一般的にSIerの方がSES企業より高く、かつ整備されているといわれています。
システム開発プロジェクトは、「元請け企業」を頂点として、その配下に「2次請け企業」「3次請け企業」が存在する、ピラミッド型の体制となっています。そのため、上流の商流に位置する企業ほど、受注額の取り分が多くなります。
SIerは、「元請け企業」となることが大部分であるため、受注額の取り分も多いことから、人件費や福利厚生費に充てられる資金も増え、待遇もよくなるわけです。
システム開発においては、一般的に上流工程(要件定義・基本設計など)を担当する人員の単価が高いため、上流工程の担当者は高収入であることが多いです。そのため、自分のキャリアアップのため、上流工程の業務を経験したいと考える人も多いでしょう。
SES企業では、一般的に上流工程を担当するケースが多くはありません。一方、SIerは上流工程を担当することが多いことから、SIerへの転職を考える人がいるわけです。
SES | SIer | |
仕事内容 | 下流工程(プログラミング・テストなど)が多い | 上流工程(要件定義・基本設計など)が多い |
スキルセット | ・プログラミング能力・テスト経験 | ・マネジメント力・コミュニケーション力・要件定義、設計経験 |
働く環境・待遇 | ・客先常駐・待遇はSIerより劣りやすい | ・自社勤務・待遇はSESより恵まれやすい |
システム開発プロジェクトにおいて、SIerは上流工程(要件定義・基本設計など)や、システム開発プロジェクト全体のマネジメント・クライアントとのコミュニケーションを主に担当しています。
一方、SES企業は主に下流工程(プログラミング・テストなど)の業務を、SIerの指示に基づき担当しています。
SIerはシステム開発の上流工程や、システム開発プロジェクトのマネジメントを担当することが多いため、マネジメントやコミュニケーション、および要求定義や設計のスキルが必須といえます。
一方、SES企業ではプログラミング能力やテストケース作成・テスト実行のためのスキルが重要であるため、スキルセットがSIerとは大きく異なります。
SIerの社員は、主に自社のフロアで働くことが多く、また給与やボーナスおよび福利厚生などの待遇も、SES企業より恵まれていることが多いです。
一方、SES企業の社員は、主にクライアント先に常駐して勤務することが多く、収入や福利厚生面といった待遇も、SIerより劣っているといわれています。
20代の転職希望者に、SIerが求めている人材像は、開発経験3年以上またはインフラの設計、構築の経験が3年以上あることです。
開発経験やインフラの設計、構築などの業務は、SES企業でも担当できる可能性は高いため、実務を通してプログラミング能力やテスト手法などのスキルを習得しておくとよいでしょう。
また、情報処理技術者試験を受験して、資格を取っておくと採用にあたって有利に
はたらく場合があるでしょう。
30代の転職希望者に、SIerが求めている人材像は、プロジェクトリーダーの経験があり、要件定義の経験もあるといった人材です。
ここでいうプロジェクトリーダーとは、開発予算が2000~4000万円以上、開発工数が25~50人月以上の案件で、プロジェクトを回した経験がある人材を指します。
SES企業の社員の場合、「2次請け」に位置する企業であれば、上記の開発予算・工数のプロジェクトのリーダーを担当するチャンスもありえます。そのため、プロジェクトリーダーになるため、上司に積極的にアピールをするとともに、リーダーになるに相応しい実績を今の業務であげることが重要です。
40代の転職希望者に、SIerが求めている人材像は、プロジェクトマネージャーの経験がある人材です。
ここで想定されているプロジェクトの規模は、開発予算が1億円以上、開発工数が125人月以上の案件です。
SES企業で、この規模のプロジェクトを担当できるチャンスは、あまり多くはないでしょう。そのため、情報処理技術者試験の一つであるプロジェクトマネージャー試験に合格し、この資格を持つなど、実務経験がなくても開発予算1億円以上のプロジェクトマネージャーができるポテンシャルがあることを示す必要があるでしょう。
SES企業で担当してきた業務の中で、SIerが志望者に求めている開発経験やマネジメント経験がある場合は、その旨履歴書・職務経歴書でアピールするとよいでしょう。どのような開発プロジェクトであり、どれくらいの開発予算や開発工数で、どのようなスキルを得られたかを、具体的に記載しましょう。
なお自社サービスで、履歴書や職務経歴書のフォーマットの共有や、書類の添削も行えるので、ぜひお問い合わせください。
ここでは、面接でよく聞かれる質問と、その回答例を解説します。
→約30人月程度の開発プロジェクトリーダー経験があります。この業務の中で、スケジュール管理やリスク管理および品質管理の手法について学びました。これらの学びは、SIerの業務でも必要不可欠なスキルであるため、貴社に貢献できると考えています。
→SESは開発プロジェクト体制の商流で、主に「2次請け」以降に位置し、プログラミングやテストなどの下流工程を担当しています。SIerは商流では「元請け」であることが多く、開発プロジェクト全体のマネジメントや要件定義などの上流工程を担当することが多いです。
→はい。私は上流工程の業務経験が少ないため、積極的に本を読んだり先輩に不明点を聞くことで学んでいきたいと考えています。また、新技術についても概要や大まかな動向については、定期的に専門誌を読むことで知識をアップデートしています。
SIerに転職した場合に、将来的にどのようなエンジニアになりたいと考えているか、また5年後・10年後の自分の目標を自らの言葉で語れるようにしておきましょう。
目指すエンジニア像を語る際には、会社側にどのようなメリットがあるかも考え、その考えを話せるように準備が必要です。
SES企業の担当業務は、主に開発プロジェクト工程の中の下流工程(プログラミング・テストなど)であり、「元請け」からの包括的な指示に従って進めていきます。
一方、SIerの担当業務は、開発プロジェクト全体のマネジメント、開発プロジェクト工程の中の上流工程(要件定義・基本設計)、クライアントワークなどを担当します。
このように、SESとSIerでは役割・業務内容が異なるため、この違いを正しく認識したうえで、SIerへの転職を考えましょう。
SES企業で求められる人材は、プログラミング能力やテストを行うスキルです。一方、SIerではプログラミング能力に加え、マネジメント・コミュニケーションといったスキルが求められます。
このように、SES企業とSIer間では求められるスキルが異なります。そのため、自分の性格や得意ジャンル、今後目指すべきエンジニア像を、じっくりと考えてSIerに転職するか否かを判断しましょう。
ここまで解説したように、SES企業とSIerとでは会社の役割・業務範囲・求められるスキルなどが異なります。そのため、IT業界の経験年数が長いからといって、必ずしもSIerの仕事が務まるわけではありません。
この点について、しっかりと自覚した上で、SIerへの転職をするか否かを判断しましょう。
SES企業から、SIerへの転職は難しいという声もありますが、必ずしもそうではないことがお分かりになったのではないでしょうか。
SES企業で培ってきた経験は、決してすべてが無駄になるわけではありません。SIerで必要とされているスキルを、SES企業での実務経験を通して、身に着けることも可能です。
また、SIerへの転職に際しては、転職目的の明確化や準備の徹底を、しっかりと行っていくと転職に成功する確率も上がるでしょう。
SIerへの転職活動を個人で行うのは、効率がよくありません。そのため、転職エージェントの利用をおすすめします。数多くのエージェントがある中で、特にエンジニア転職に特化したキッカケエージェントを利用してみませんか。あなたの志望企業への転職を徹底サポートし、転職成功にグッと近づくでしょう。
今の時点でご経験をされている言語や技術要素に関係なく、
①技術を通じてユーザーやお客様にとって使いやすいサービスの実現に興味があるエンジニアの方
②興味・関心がある技術について自ら学ぶ意欲をお持ちの方
上記に当てはまる方でしたら、素晴らしい企業とのマッチングをお手伝いできる可能性が高いです。
最近はお住まいの場所に限らず応募ができる企業や経験年数に関係なくフラットにご評価をして下さる企業も増えているため、ぜひ一度モロー宛てにご相談を頂けますと幸いです。