ITエンジニアで面接が苦手な方は多いのではないでしょうか。よくある質問は想定できても、意欲やスキル、経験などを内定につながるように伝えるにはどうすればいいか悩みますよね。
そこで本記事では、ITエンジニアの面接を模擬面接でリアルに再現し、よくある質問の模範回答をご紹介します。さらに、フィードバックで通過率をアップするための改善ポイントも解説しますので、面接で実践的に役立つ内容となっています。
また、動画では、実際に模擬面接やフィードバックの様子をご覧いただけます。面接での話し方についても参考にしていただけますので、ぜひ併せてご覧ください。
<この記事の監修者>
毛呂 淳一朗「IT菩薩モロー」
某IT企業にてエンジニア採用を4年弱担当。現在は株式会社キッカケクリエイションの取締役副社長かつエンジニアのキャリアパス・転職の情報に特化したYouTuber「IT菩薩モロー」として発信活動中。「キッカケエージェント」にて、エンジニアの採用・転職支援に取り組んでいる。
<この記事の動画>
「素晴らしい!」元IT人事が大絶賛!転職希望のエンジニアと面接対策を行ったらクオリティが高すぎて模範解答になった
目次
ITエンジニアの面接を行う企業は、自社にマッチする人材を採用するためにさまざまな採用基準に沿って質問を準備しています。
具体的な面接の質問と回答をご紹介する前に、それぞれの質問意図で何をチェックしているかを確認しましょう。
企業が転職理由の質問をするのは「採用後に同じ理由で転職されるリスクがないか」ということを知りたいためです。仕事や働き方で重視することや、それが自社で実現できるかを確認します。
求職者の企業選びの軸を知ることで、スキルをどのように活かしたいと考えているのか、どのような点に魅力を感じて自社を選んだのかを確認します。
なぜその企業を志望したのか、自社の商品・サービスを理解したうえで志望しているのかを知ることによって、志望度の高さや意欲を確認します。最近は同じ業界・同じようなサービスを展開する競合他社と比較した際、なぜその企業の事業内容・サービスに興味を持ったのかを具体的に伝えられないとお見送りになるケースが増えています。
転職理由と企業選びの軸、志望理由には一貫性があることが大切です。
企業は、求職者のキャリアプランについて知ることで、自社の事業内容やキャリアパスとマッチするか、共に成長していけるか、といった点を判断したいと考えています。
エンジニアは「~の言語・フレームワークを利用した経験が積みたい」「AWSなどのクラウドインフラの設計・構築の経験に携わりたい」「リーダー・マネジメントの経験が積みたい」といった自分の希望だけを話しがちですが、これだけではお見送りになる可能性が高いです。「入社した後、その企業の組織や事業・サービスにどのように具体的に貢献できるのか」という視点で、他者の役に立ちたいマインドをアピールしないと、高い技術スキルを持っていてもお見送りになることが多いです。
入社後のミスマッチを防ぐためにも、その企業が開発組織として抱えている課題や自社のプロダクトの課題・実際に担当する業務内容を理解しているか、企業側は候補者へ具体的に確認したいと考えています。
たとえばフロントエンドのエンジニアは充足している企業に対して「Reactで開発経験が積みたい」といった話をするのは円滑なコミュニケーションという観点では厳しい評価になってしまいますが、このようなコミュニケーションをとりがちなエンジニアは少なくありません。(会社説明をメインとする)カジュアル面談の時点から開発組織として抱えている課題・自社のプロダクトの課題などについて具体的にヒアリングしていないと的外れな回答をしがちです。
しかしこのような企業の内部情報を適切に把握することは簡単ではないため、キッカケクリエイションのような企業の内部事情を詳しく把握した転職エージェントの支援を受けることは大いに役立ちます。
携わったプロジェクトで、トラブルや困難があった時にどのように対処してきたのかを質問することによって、課題解決スキルや周囲との協調性などを把握します。具体的には以下の(1)~(3)についてご自身が経験したエピソードを元にお話する必要があります。
(1)プロジェクトにおける課題
(2)(1)に対していつ・どこで・誰が・どのぐらいの金額で・どのように課題を解決したか?また課題に取り組んだか?
(3)(2)の結果として具体的にどのような成果を残したのかを具体的な数字やキーワードで説明する
現在のスキルや知識を深めるほかにも、最新技術に対する関心度や向学心があるかどうか、未経験業務に対する順応性の高さや、成長への意欲などを評価します。
面接対策として、何を質問されるか、その質問で何を問われているのかを理解することが大切です。
〇〇の言語、技術要素に興味があるといった話をした際、「入社してから勉強します」は企業側からすると受け身の姿勢が強いため、非常に低い評価になることが多いです。
・個人開発としてのサービスの運用
・技術ブログや記事の執筆
など、業務外で具体的にどのようなアウトプットを持っているかを求められます。
また、質問に対して1つの回答を考えるだけではなく、「志望する企業がどのような人材を求めているのか」を理解して、志望企業ごとに回答を準備することが重要になります。
例えば、企業側がサーバーサイドの開発におけるテストの自動化などに課題を感じていた場合、フロントエンドの開発について勉強していますという話をしても魅力的な人材であるとは思われづらいです。
上記の他にも、ビジネスマナーやコミュニケーション能力、人柄なども企業が面接で自社にマッチする人材を見極めるための重要なポイントです。質問への回答と合わせて、身だしなみや面接官に伝わる話し方についても準備をしましょう。
ここからは、ITエンジニアの中途採用面接を想定した模擬面接で、よくある質問とそれに対する回答例をご紹介します。
回答の良かった点や、改善すれば通過率をアップできる点についてもフィードバックしていますので、ぜひ参考にしてください。
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ITエンジニアの太田さん(26歳)
・現年収:360万円
・希望年収:420万円
・スキル:Java2年、2〜3名のリーダー経験有
・業務内容:SES企業で業務系のシステム開発を担当、官公庁案件で改修がメイン
面接官 モロー
株式会社キッカケシステムズ(仮名)のエンジニアでチームリーダー
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Q:今の職場でチームリーダーを経験されていますが、転職したいと考えるようになったきっかけは何ですか?
太田さん:今の職場は勉強熱心な方が少なく、システムに対しても積極的に提案する方がいらっしゃらない印象です。自分なりに改善の提案というアクションを起こしてみましたが、環境的になかなか難しいところがあり、それが今回転職を考えるきっかけになりました。
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モローのフィードバック
⭕️成果を出すために努力した経験談
⭕️サービスの改善、お客様やユーザーに対してベクトルが向いていると伝わる話
全体的な方向性は良いです。「自分から提案をした」という話に対して、もう少し具体的なエピソードを話せるとベターです。
ポイントは「自分なりに〇〇するなどして動いてみたが、職場やチームが変わらなかったので転職を考えた」という話であれば、面接官に納得感があると思います。
逆に面接する企業側から敬遠されてしまう受け答えは、
❌ひたすら現職についての不満を話してしまう
→主体性のなさ・周りの環境や人のせいにする考え方が伝わってしまう
これは、マイナス評価につながってしまうことが多いので注意しましょう。
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Q:太田さんが自分で働きたいと思う企業として、どんな企業選びの軸をお持ちですか?
太田さん:1つ目は、勉強熱心な方がいらっしゃって、ナレッジシェアが盛んな文化がある、そんな社風がある企業を志望しています。
2つ目は、少なからずテストコードを書く環境があり、品質、運用に対して本気で取り組まれているような企業で働きたいと考えています。
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モローのフィードバック
⭕️一定の勉強をしていることが伝わる話(運用や品質に意識が向いている)
企業選びの軸に関して良い点は、運用や品質について意識が向いていると感じられた点です。一定の勉強をしているエンジニアだな、という評価につながりますし、システムは作って終わりではなく運用をし始めてからが本番なので、その点を理解しているところも良いです。サービスの成長に繋げられる改善活動などに対して、ベクトルが向いていたところは良かった点です。
逆に評価されない言い方としては、
❌「とにかくGo言語で開発したい」
❌「インフラの経験を積みたい」
❌「とにかく早くリーダー・マネジメントの経験が積みたい」
→自分が主語になっている話し方のみだとサービスや事業の成長・所属する企業へ貢献する利他のマインドがないということでマイナス評価になりやすいでしょう。
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Q:どのような企業を志望されているのかイメージできました。私たちの会社に興味を持ってくださったきっかけ、面接を受けたいと思われた志望理由を教えていただけますか?
太田さん:志望理由としては、御社のサービスが毎年成長していると感じた点と、御社は自社開発企業なので、良い経験が積めると感じた点です。
また、私はリーダー経験を積みたいと考えていますので、毎年新規事業を立ち上げていらっしゃる御社なら、リーダー経験というチャンスが回ってくるのではと感じ、志望いたしました。
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モローのフィードバック
⭕️開発組織・サービスの現状を最低限調べている
⭕️開発組織・サービスの課題に対して提案が出来ている
→さらに踏み込んだサービスの改善提案などができるとベター
志望する企業のサービスが成長しているかどうかを調べられていることは良い点です。
プラスアルファとして「成長しているサービスのなかでこんなことがしたい」とか、リーダー経験の話からさらに踏み込んで「こういう部分の機能改善をするともっとユーザーが伸びるのでは」などの話ができるとベターですね。
理想的な話し方としては、
⭕️自分のスキル・経験をアピール
⭕️それを活かした具体的な課題解決の提案
面接する企業における開発組織やプロダクトの課題が、X(旧Twitter)、技術ブログ、エンジニアのインタビュー記事などでシェアされていることがあります。
それを調べて「私はこのようなスキル・経験を持っているので、御社の課題解決に役立てられると思います」という話ができると、適切な情報収集のスキルがあり、課題解決型の人であると評価してもらいやすいでしょう。
ここまで話せる人は少ないので、他の求職者に対しても大きく差別化できると思います。
改善ポイントは「自社開発企業=良い経験が積める」という部分です。これは会社によるので面接官から突っ込まれるかもしれません。極端な例で言うと gitを全く入れていなかったり、テストコードを書いていなかったりする自社開発企業もあります。
「自社開発の企業の中でも〇〇な企業に行きたいですが、逆に〇〇な企業は選びたくないです」など、解像度高く伝えられるとさらに良いでしょう。
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Q:私たちの会社に入社するかどうかに関わらず、ITエンジニアとして1年後、3年後の短期目標、中長期でやりたいことや目標があれば、教えていただけますか?
太田さん:直近ではこれまで経験してきたバックエンドのスキルを活かしつつ、半年から1年で開発・テスト・運用まで一通りできるようなスキルを身につけたいです。
中長期的には、1〜2年でリーダー経験を積みたいと考えています。そう考えた背景としては、御社のWebサイトを拝見した際に、若い方が多い環境だと感じたからです。そういった方に対して目線を下げてタスクを振ったり、業務についてお話ししたりすることが自分にマッチしていると感じました。
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モローのフィードバック
⭕️具体的な理由をつけたキャリアパスの提示
⭕️企業側の現状に対してどのようなスキル、経験で貢献できるかを具体的にアピールする
さらに一言アドバイスすると…
今後のキャリアパスについて、3年後、5年後は少し先で答えづらいと思った場合は、「AとBのふたつの方向性で考えていますが、それぞれ〇〇の理由でこのキャリアパスを考えています」のように伝えてみましょう。
やりたいことが具体的に決まっていなかったとしても自然に話しやすいと思います。
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Q:私たちの会社に入社してからチャレンジしたいことはありますか?
太田さん:先ほどと重なる点もありますが、御社は新卒入社の方や2〜3年目のエンジニアの方が非常に多い環境だと思います。そのため、現状はリーダーが少ないのではと予想しています。
私は、若い方たちを育成できるような立場になるまでスキルアップしていきたいと考えています。
そのうえで、興味があるフロントエンドの領域にもチャレンジしていきたいと考えています。
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モローのフィードバック
⭕️会社やプロダクトの課題に合わせて話ができる
良い点は、「自分のスキルを磨きたい」という自分の希望だけの話ではなかった、という点です。
面接する企業にとって大事なことは、求職者がチーム・組織・サービスに対してどのように貢献できるかです。
太田さんが、面接に参加している企業の課題(リーダーが少ない)を明確にして、自分の適性を活かして役立てる(若い方を育成できるような立場までスキルアップしたい)という話ができた点は、企業についてきちんと調べていると感じられるので、良い点ですね。
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Q:太田さんはJavaの業務系システム開発をご経験されていますが、今までで大変だったプロジェクトや、その時に工夫したことなど、印象に残っているプロジェクトについて教えていただけますか?
太田さん:通常一ヶ月かかる開発案件で、エンド企業のお客様とスケジュールについての打ち合わせをしていた際、ITリテラシーがあまり高くないお客様だったので「一週間程度で」と依頼され、ちょっと大変だったという記憶があります。
そこで工夫した点は、図やイラストを使ってお客様に現実的なスケジュール感を納得いただけるよう説明したことです。
また、ミーティングの決定事項は、必ずメールやテキストで送るように意識して、言った、言わないが起きないようにしました。
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モローのフィードバック
⭕️自分なりにどんな工夫をしたのか、具体的な数字やキーワードで定量的に話す
今まで大変だったプロジェクトについてや、課題に対して自分が行ったことについては、抽象的な表現が多かったように感じました。
改善点としては、「図やイラストを使うことで、手戻りの回数が今まで20回だったのが、3分の1になりました」など具体的なキーワードや数字で、ビフォーアフターでどのぐらい成果が変わったのかということを話せるとさらに良いと思います。
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Q:私たちは、Java以外にも、PHPやLaravel、AWSなどさまざまな技術を使います。太田さんが業務外で勉強していることがあれば教えていただけますか?
太田さん:今の現場はテストコードを書かない環境になっていますので、もしテストコードを書く際には、入社後に全力で勉強したいと考えています。
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モローのフィードバック
❌「入ってからがんばります(今は何もしていない)」
→特に自分から主体性をもって学んでいるという姿勢が見られないと、お見送りになりやすいです。
通過率をアップさせるための一例を紹介します
今までJavaがメインの方が、PHPやLaravelの企業の面接を受けたとします。面接対策として事前にチュートリアルや公式ドキュメントを読んで、PHPで簡単なシステムを作ってみて、JavaとPHPの違いやキャッチアップまでにどのぐらいかかるか、までを話せるとよいですね。
このレベルまで話せる人は、私の感覚だと10人に1人いるかどうかのレベルです。
自分なりに調べてきたことをアピールできれば「自主的に学べる人」という評価をしてもらえるでしょう。
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今回の模擬面接でご協力いただいた太田さんは、面接でお話されるのが上手な方で、よい回答例としてご紹介させていただきました。志望する企業やサービスにどのように貢献できるのか、学ぶ意欲があるかなどについてきちんと伝えられているところが良い点でした。
スキルや経験が豊富なITエンジニアでも、面接の受け答えが残念なためにお見送りとなってしまう方は本当に多いのです。
転職を検討される方は、「自分がなぜ転職したいのか」、「志望企業にどのように貢献できるのか」などを言語化できるようにするためにも、事前の準備が大切です。早いうちに面接・面談の対策に取り組んでいただくと、自分にとって良い会社、働きやすい職場に出会える可能性が高まるでしょう。
弊社キッカケエージェントでは面接対策のほか、3~5年後を見越したキャリア相談や転職相談などエンジニアのキャリアに関する悩みを幅広く受け付けています。平日・土日・祝日を問わず、いつでも無料でご相談いただけますので下記よりお問い合わせください。
また、以下より年齢別・ポジション別の面接対策特典動画をプレゼントしています。これから面接対策を始めようと考えている方は是非参考にしてみてください。
今の時点でご経験をされている言語や技術要素に関係なく、
①技術を通じてユーザーやお客様にとって使いやすいサービスの実現に興味があるエンジニアの方
②興味・関心がある技術について自ら学ぶ意欲をお持ちの方
上記に当てはまる方でしたら、素晴らしい企業とのマッチングをお手伝いできる可能性が高いです。
最近はお住まいの場所に限らず応募ができる企業や経験年数に関係なくフラットにご評価をして下さる企業も増えているため、ぜひ一度モロー宛てにご相談を頂けますと幸いです。